3/30(木)に行われた社会福祉連携推進法人リガーレ実践事例発表会で、介護老人保健施設ここちの郷の中森清貴理学療法士が、取り組んだ事例について報告した(共同研究 春野 奈緒子(理学療法士)、森 明子(清水苑居宅介護支援センター))。
ここちの郷で訪問リハビリテーション(以下、訪リハ)を開始して1年半、現在は主に2名の理学療法士が担当しているが、当初利用者層と想定していた老健退所後、通所リハビリテーションからの移行に加えて、介護サービス利用はこれが初めてという方も意外に多い。
今回、「訪問リハ介入による社会参加の向上を目指した一症例」として、介入から1年経過した事例を取り上げたが、この方(76歳、男性、要支援1)も、初めての介護サービス利用である。居宅ケアマネージャー様へ相談される中で、いくつかの介護サービスを検討された中、訪問リハを選択された。
この男性は、10年前66歳のとき、進行性の疾患であるパーキンソン病を発症された。店舗経営者で元来社会的な性格であったが症状の進行とともに屋外へ出ることが困難となった。日常生活の意欲も随分と低下したが、訪リハによる継続した支援により姿勢等が改善され、意欲向上含め画像を交えて報告した。
老齢期のリハビリテーションは、病気の理解や生活習慣の改善が上手くいかず、目標の達成が難しいことも珍しくない。この事例では、施設長(医師)の診察と評価、それを基にした予後予測の元、理学療法士がご本人やご家族に分かりやすく丁寧に説明したこと、自主練習の提案など、キーパーソン(妻)への働きかけも含めてアプローチを重ねたことが、良い結果を生んでいる。勿論、進行性の疾患であり、新たな課題も出現する中で継続した取り組みが必要となるため、現状を見極めつつ支援を継続したい。
ただ、今回の事例も含め、気づいたことは、介護サービスのアウトリーチの重要性である。施設系サービスだけでは気づかなかったことも、訪問サービスという手法を持ったことでニーズの多様性に気づかされることが多い。「訪問させてもらえたら。」「自宅でリハビリテーションができたら。」と感じる場面が度々ある。その際には、こちら側がアウトリーチの手法を多様に持ち、それを提案する力が問われることになる。自宅というご本人の住み慣れた環境で、如何にその人らしく暮らしを継続してもらえるか、身体機能の維持向上に加え、支援の多面性や深みが求められる。
訪問リハビリテーションの1年半で、介護が必要になり始めた方から看取りの方まで多様なご利用者様に接することができた。多職種での連携は勿論のこと、ご家族や地域の方とも繋がりながら、形にできていないニーズを形にし、サービスに繋げる力を付けていきたい。尚、この症例は更に精査し、別の機会に発表したいと考えている。
介護老人保健施設ここちの郷 副施設長 愛須 和美