世界中が新型コロナウイルス感染症のニュースに不安を感じて過ごす日々が続く中でも季節は進み、敷地内の桜は見ごろを迎えている。
「外出したらあかんって言われてるしな」「まだ肌寒いしなぁ」と話していた利用者様も、リハビリの誘いに「運動(リハビリ)は今はいいわ」と答える利用者様も、『桜が咲き始めましたよ』と声を掛けると「ほんまに?見に行こう!」と明るい声で足取りも軽くなる。
リハビリテーションは【いつ】【誰が】【何のために】【何を】するのかと、常に考える。体操や筋力トレーニング、身の回りの動作の練習、訓練室で歩くこと…もちろんそれも一部ではあるが、もっと日常の中にも大切なことがある。
『桜』と聞いて、見に行ってみたいと思うと、多くの動きに繋がる。起きる、座る、立つ、外に行く前にトイレに行って、髪と服を整えて、肌寒いかもしれないから上着を着て。桜の木が見えるところまで移動する。杖、歩行器で、車椅子で。近くにいた人も誘う。桜を見て、空を見上げて、地を見て、春の匂いと風を感じる。昔を懐かしみ会話する。
その人がしたいと思うことで、体も動く。『したいと思うこと』を引き出す、そして叶える方法を探し導くことが、リハビリテーションであり、私たちの専門職の役割だと思う。
ここちの郷 作業療法士 小菅 知子