人材採用広報として、「就活をする学生と接しながら僕の昭和な感覚に愕然とした・・・」「こんな感覚で、学生たちに何か伝えられるだろうか?」
もっと、やわらかく、しなやかに、伝えていくにはどうしたら良いのだろう(南出)
杉原優子(以下・杉原) 私の知るある京都の学生が社会福祉を勉強する中でしんどくなり、しばらく大学を休んだことがありました。「そろそろ学校にも行かないと・・・」と本人が感じていたころ、偶然にも私の担当する授業へ聴講に来てくれたんです。そして授業後につかつかと寄ってきて言ったんです。「杉原さんの話を聴いて救われました・・・」と。
南出浩次(以下・南出) 彼女心に「何か」が響いたんですね。杉原さんはどんな話をしたんですか?
杉原 クライアントとのエピソードを話しただけなんです。それも生っぽい話をしただけです。これからの日本は・・・とか、社会保障とか制度とか、みたいな話はしてないんですよ。
南出 なるほど・・・。その作られていない現場のエピソードが彼女の気持ちに届いたんでしょうね。私も、最近滋賀の福祉系学部の3回生と話していたんですが、どんなところに就職したいの?と尋ねるてみると、「介護より他の福祉分野が魅力的なんです」とはっきり言うんですよ。少し、掘り下げて聞いてみると、「社会保障論」では、財源の話になり介護保険や介護職の将来はない、とても暗いように感じたり、介護の勉強イコール認知症のイメージがあり、暗くなってしまうみたいなんです。
杉原 確かに大学の授業には、福祉の理想を求めるあまり、現行の制度批判の部分があり、それはそれで必要なのだけど学生のモチベーションを下げているのかもしれないですね。私の授業で、介護現場でのちょっとしたエピソードやその時に感じたことなど話すことも多く、それが割とリアルな形で、先ほど言った彼女の気持ちにも少し響いたのかも知れませんね。
南出 今、実際に介護の現場で仕事している人たちの面白みや、やりがいを学生に伝えられるといいですね。本当の「介護のリアル」みたいな・・・。
今の学生は「作られたもの」「本当でないもの」には敏感に反応するような気がします。それと、私たちの仕事は営利目的ではないので、そこの「ジレンマ」や「悩み」も持っていますよね?
杉原 そうですね。そのリアルさ、きれいなことばかりではなくて、割とドロッとしたことも含めて、「介護のリアル」、「豊かさ」のようなものを学生の気持ちに届けられたらいいですね。
今きたおおじで新規事業、新しい施設を計画しているのですが、一つの施設ができるまでにはたくさんのことを考えて、決めていかなければなりません。そのようなプロセスをいろいろな人の意見を聞きたくて、ワークショップ形式にしようと思っています。そこには、学生さんの参加も大歓迎です。
南出 それは面白そうですね。学生さんには、リアルな勉強の機会になりそうですね。私ものぞきに行きたいな…。でも、そこでは住民さんからガチンコで異論を言われたり、意見がぶつかり合う、分かり合えない場面のようなシチュエーションもありますよね?どうしますか?
杉原 そこも含めて地域や地域住民とどのように向き合うか、私たちは何を大切にして仕事をしているのか、これから何を基軸に仕事をしていくのかみたいなことも学生と共有できたら最高ですね。それと信じた事業の成功に向けて諦めない姿というか、そこも開示していきたいですね。
人の生活や暮らしって、いろんなことがあって、キレイもそうでない面も、清濁併せ持ってますよね。支援もその生活や暮らしに添ったものですから、その清濁両方の「豊かさ」を学生や求職者に伝えられたらいいなと思っています。
南出 介護の仕事は、地域に開かれていく流れです。地域の人や学生とともに、「地域の暮らし」を考えながら作り上げていく事が、福祉、そして介護の仕事の魅力を発信していくことにつながるのかもしれませんね。