今年8月、社会福祉士養成、ソーシャルワーク実習の学生Mさんを(女性)を六心会で受け入れた。この実習の特徴は、養成課程の見直し、つまり大学などの養成機関で「新カリキュラム」実施後、初めての実習であるということだ。 彼女は昨年4月に大学へ入学し、新たな教育内容で社会福祉を学ぶ第一期生である。
国家資格である社会福祉士養成のカリキュラムは、1987年の資格創設後、2007年に見直され、10年以上が経過した。しかし、この間、我が国では少子高齢化の進展、社会・経済状況変化を背景に、地域コミュニティや家族の姿も大きく変化。住民が抱える地域生活課題も多様化・複雑化し、「地域共生社会」の実現が政策として掲げられてきた。 地域生活課題対応最前線の専門職である社会福祉士に関しても実践力の向上や能力の発揮など、養成の内容(カリキュラム)が大幅に見直しされた。 新カリキュラムでは「相談援助」という言葉が「ソーシャルワーク」となり、「地域福祉と包括的支援体制」という新科目が追加された。そして、実習も「相談援助実習」から「ソーシャルワーク実習」に変更となり、実習時間は180時間から240時間に増え、2か所以上の事業所や相談機関で実習を受けることが必須となった。 六心会では、90年代法人設立間もない頃に社会福祉士実習を受け入れたが、実習指導の体制が整っていたとは言い難く、当会としても今回の受入が初めてに近い。新型コロナウイルス感染拡大ということもあって、実習プログラムの内容は検討を重ねてきた。
こうして始まった実習。
六心会は3つの福祉施設を経営しており、擁する専門職も多種多様。「多職種連携」という言葉は頻繁に使われるが、それぞれ専門職の役割分担と連携について、外部からはわかりにくい。Mさんも実習前はソーシャルワーカーと他の職種の役割分担の具体的イメージが難しかった様子。「多職種連携」の実際ってどうか、その意義や役割など、カンファレンスへの参加など、連携の下でどのようにケア提供へ至るのか、プロセスを体験してもらった。 実習の中では、介護サービスを利用して自宅で暮らす高齢者への同行訪問も。担当する介護支援専門員(ケアマネージャ)は利用者と何を話し、何に着眼しているのか。別の場面では、家族からの相談に生活相談員はどのように対応し、家族の不安を受けとめているのか、それぞれの専門職が日常でどのような姿勢で専門性を発揮しているのか、できるだけリアルな現場をMさんに体験してもらうことを心掛けた。
当会が力を注ぐ機関連携の場にも参加。五個荘地区社会福祉協議会会長との懇談と会議、子ども食堂で一緒に活動している地元自治会の民生委員・児童委員との懇談も体験。また、子ども食堂で一緒に活動している養護老人ホームの見学も体験し、組織を越えてどのように協働するのかを感じてもらえたように思う。
相談援助は、クライエントとの関係性構築はじめ、個別性が高く、時間がかかる。スムーズに運ばないことも多々あり、クライエントやその家族の不安や心配が言葉にされないことも多い。核心は何か、背後にある思いをその人の歴史や環境から引き出す作業でもあり、アセスメントし感じる能力が必要となる。 実習では、未だ大学で勉強していない内容、知らない言葉(専門用語)にも数多く遭遇。六心会のスタッフから「分からないことは気楽に、そして早めになんでも聞いて」との言葉かけや、地域住民の皆様からいただいた「頑張って」と励ましの言葉もあり、Mさんは無事に実習を修了した。前向きで柔軟な姿勢で終始実習に臨まれる姿に私も大きな刺激をもらった。最終日の振り返りでは「社会福祉士国家試験にトライし、社会福祉士として仕事をしたい」との言葉も出て、実習指導を担った私としては胸に込み上げてくるものがあった。 他者との交わりを絶つことを基本とする感染症防止対策に明け暮れたこの2年半の影響は大きく、地域社会では生活困窮や孤独・孤立の問題が潜在化している。ソーシャルワークの歩みをともに進める次世代の仲間が1人でも多く育つことが何より期待されている。そのためなら、私もできる限りのことをしていきたい。
最後に、今回のソーシャルワーク実習に協力してくださった六心会の各専門職、そして、地域の方々、そしてMさんに心より御礼を申し上げます。
六心会ソーシャルワーク実習指導 奥村昭(法人本部 地域支援担当、社会福祉士)